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          メール・マガジン

      「FNサービス 問題解決おたすけマン」

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    ★第059号       ’00−09−15★

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     英語社員

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●およそ英語を学ぶ人で、

 

ペラペラと(では安っぽいなら、流暢に)喋れたらなあ、と思わない人はまず

いないでしょう。  それでメシが食えたらな、と思う人も少なくはないはず。

 

ほかの国だったらメシの種になんかなりっこない<英会話能力>が、この国で

は未だ、なり得る、、   遺憾ながら、英語後進国の証明。   ところで、

 

 

一般ビジネス社会では、「好きだから、、」でそれを職業とし、その道で自分の

特性を生かすことに成功する、という幸せな人は希です。 憲法(第22条)が

職業選択の自由を保障しているにも拘わらず、、   思えば不思議なことです。

 

試しに訊いてご覧なさい。 「あなたがその仕事をしているのは、好きで選んだ

から、ですか?」と。   答えはたいてい、「いや、別に、、」や「たまたま

ですよ、、」くらい。  たとえ「好きで選んだ」人でも、「楽しんでいる」と

までは言い切らないのが普通です。    ところが、

 

その仕事に就いた人が<皆>、好きでそれを選び、さらにそれを楽しんだ、と

いう例外的な例が一つ、昔ありました。  それが今回のテーマ、<英語社員>。

いわば企業の<お抱え通訳>。   高度成長時代のあだ花、、  でした。

 

*   *

 

国際化の第一波は、技術導入、技術提携、合弁事業など。  モノの行き来だけ

なら商社に頼めば済みますが、その先へ進もうとすれば、やはり自前の英語力が

必要。  で、英語堪能者の採用や抜擢が盛んに行なわれるようになりました。

 

外国企業との交渉場面での即戦力要員、としてですから、多くは商社の海外駐在

経験者。   今は珍しくもなくなった<ハンティング>のハシリであったかも。

 

永い精勤を誇りとする在来社員から見れば、面白くない奴ら。 会社の本業に

ついてはろくな知識も無いのが、いきなり現われて脚光を浴び、トップ側近の

ように振る舞うのですから。  本流業務の面々は悔し紛れに、陰では彼らを

<英語社員>と呼んで蔑んだものでした。

 

たしかに<虎の威を借>り、やたら羽振りを利かせた<狐>もおりましたよ。

おエラの海外出張に付き添っては大名旅行、ガイジンさんの来日に際しては

<お髭の塵を払う>ようなサービス。  面白くない、と見る人もいて当然。

 

何しろ本流現場人は作業衣でも、<英語社員>はピカピカのスーツ、真っ白な

シャツに舶来ネクタイ。  ガイジンさん本位だから、昼食もアルコール付き。

毎日それを<楽しんだ>結果、肝臓を傷めて職を失った人もいたのだから。

 

*   *   *

 

ガイジンさんの方にも良くない傾向がありました。 <日本担当>のくせに、

何故か日本人を見下し、日本的慣行を嫌ってアチラの流儀にこだわるなど。

 

そんな相手にも<英語社員>は調子を合わせます。 合わせているうちに、

自分が日本人であることを忘れるらしい。 無意識ではあろうが、日本や

日本人への軽蔑を、態度や表情にチラつかせる。  どっちの味方なんだ?

 

だいたい外様だし、そんな具合じゃ社内本流に馴染まない。 そのうちには

提携や合弁設立の作業も一段落、あとは本流社員の出番。 <英語社員>は、

もはや必要でなくなる。  と、どこかほかの会社の提携話が聞こえてくる、、

 

アチラ風にかぶれた人たちだから、転職イコール昇進と考え、アッサリ乗り

換えます。 だから彼ら同士、挨拶の始まりは、「今どこでやってるの?」。

(「何してるの?」とは訊かない。 初めからお互い、百も承知ですから)

伝統的日本人からすれば無節操。 しかし彼ら、時代に先駆けていたのかも。

 

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●人間的、能力的にどうか、

 

となると私の知る限り、そう優れた<英語社員>はいなかったように思います。

英語力にしても、契約の込み入った部分は弁護士など専門家の仕事になります

から、彼らが受け持ったのは表面的、儀礼的部分。  それも安心ならない。

 

何しろ日本側トップが喋るのは<日本語>。  相手が明らかに異文化の人々

なのに、それを意識して喋る習慣が無い。  内輪に対するのと同様、「その

辺、ひとつ宜しく、、」とか、「前向きに検討、、」や「善処します」など。

それらを<英語社員>がどう通じさせたか、甚だ怪しいものです。  また、

 

ガイジンさんたちのズバズバした切り込みを、そのニュアンス通りに伝えたか

どうかも疑わしい。  そんな時、彼ら<英語社員>自身の中の<日本人>が

妨げにならなかったか?  格好はともかく、中身は典型的日本人なんだから。

 

 

もちろん彼らなりの苦労はあったでしょう。  そんな話が通じるのは、やはり

<英語社員>同士。  出身母体が同じ、あるいは類似だから、なおさらです。

 

従って<放課後>、銀座のバーでは < Birds of a feather flock together. >

そのままの光景が、よく見られました。  が、そのお喋りと来たら戦争直後、

アメリカ進駐軍兵士を追って Give me chocolate! とやった頃のサモシさから

大して隔たったものではなかったように思われました。    たとえば、

 

まず、どの方面へ行って来た、あれを見て来た、の観光?レポート。 すると、

どのエア・ライン?  マシンは何?  ファースト・クラス?  酒は何が

出た? という具合に細々した質問が折り重なる。  まあ、官費旅行の自慢

ごっこみたいなものですね。  ジャンボ・ジェット出現以前の、洋行帰りが

大変なステータスであった時代、ではありましたが、、  何とも幼稚な会話。

 

傍で聴いていて、なるほど、この人たちは<なりたくて、それになり>、それ

を<楽しんでいる>のだな、とある意味では評価しましたよ。  ただ問題は、

 

*   *

 

<だから、、>や<それで、、>につながらない、<コンテンツ>のやり取り

に終始していたこと。  もちろん、カタイ話をするような場所でも状況でも

なかったことは認めますが、毎度の熱中ぶりが変わらないところからすると、

あれが彼らの日常、あれが彼らの本質、としか思えませんでした。 それに、

 

彼らの得意な<条件反射英語>の特質から考えても、<プロセス>の意識など、

あり得べくもない。  いわば興味本位、成果とは無関係の思考パターンです。

 

そんな姿勢が、成果本位人間の集団に受け容れらることもまた無い。 その人

ならでは、というものが何かあり、合弁会社の役員にでも収まるのでない限り、

そう長くは置いてもらえなくて当然です。  実際、転々とする人は多かった。

 

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●<オール・イン・ワン>の私が

 

やっていたサーモスタット屋ですから、<英語社員>を雇う必要はありません

でしたが、1970年代の初頭、その種の人物と数日間、行動を共にしたこと

があります。   こちらが企んだわけでもない、全くたまたまのご縁。

 

 コングロマリットなるものが猛威を振るった時期で、私が合弁事業を望んで

 いたオハイオの中堅T社が、M&Aでエクセレント・カンパニーE社の傘下

 に収まってしまい、話の続きはそのE社を相手にしなくてはならなくなった

 からでした。  彼Y氏は、その時すでにE社日本法人の代表者。 つまり、

 <英語社員>としてはすでに成功した人、であったわけです。

 

元大使の子息で、商社マンとして海外経験も豊富。  押し出しも立派でした。

が、気位は高く、私など眼中に無い感じ。 物怖じしないはずのB型も、気軽

には話しかけられない。 まずオハイオの工場、次にセントルイスの総本山へ。

いつもの一人旅に比べると色々気疲れして、かえって楽じゃありませんでした。

 

肩書きで言えば、こちらも社長。 ビジネスは Give and Take だから対等、、、

と思うのだが、何かカバン持ちにされた気分。  必ずしも<B型のヒガミ>

で言うわけではない。  初めは首を傾げた私ですが、やがて分かりました。

 

彼が<対等>に振る舞う相手はアメリカ人、だったわけ。  私に対する時、

彼はアメリカ人を演じていたらしい。 <純>日本人の私と肩を並べて歩く

なんてことは彼の意に適わなかったようで、常にどんどん先へ行ってしまう。

 

 

しかし、さすがに英語は堪能。 <不自由は無い>程度の私とは、まず反射

の速さが違います。 とある空港で、おきまりのボディ・チェックを抜けて

歩き出した時、背後から彼に声がかかったのですが、それに対していきなり

彼が食ってかかったのにはビックリ。  なぜ怒ったのか、分からなかった。

 

あとで尋ねると、「あいつ、バディと言いやがった。」 Hey, buddy! とね。

それが彼のプライドをひどく傷つけたのです。 じゃ、Say, Mr.! なら良い

のかな、それとも Gentlemen! でなくちゃいけなかったのか、、?  黒人

の警備係から馴れ馴れしくされたのが、そんなに気に入らないのかね?

 

「知らぬが仏」と言う通り、腹を立てる程の英語力が私には無かったわけ。

たとえ分かったとしても、私は腹なんか立てなかったろうけど、、 しかし

善し悪しはともかく、その<感度>は一朝一夕じゃなかったのだ、とその後、

思い知らされました。   優雅な白鳥は水面下でも水を掻いていますぞ。

 

*   *

 

実用的な英語力を養うには、ペーパー・バックスで最新の小説を多読すべし、

と言いますが、彼の<維持向上策>もまさにそれ。 乗り継ぐ都度、空港の

売店で何冊も(!)買う。  それを次々、中毒患者のように読みふける、、、

 

便の遅れで、ホテルに着いたのが深夜になったことがありました。 予約は

キャンセルされており、2部屋は取れない。  やむなくツインの相部屋。

ところが彼、床に入っても読み続ける。  お先に、で寝入ったが、灯りが

気になって目を覚ますと未だ読んでいる。  そして、次に目覚めた時、、、

 

彼を見て驚いた。 本を捧げ持った姿勢そのままで鼾をかいていたのです。

弁慶の立ち往生、壮烈な戦死! という鬼気迫る姿でした。 その調子で、

その短い、しかもあわただしい旅の中、十数冊こなしましたな。 たかが

<英語社員>、されど陰にたゆまざるこの努力!   私は感動しました。

 

<それ>で<メシを食う>には、これくらい頑張らなくちゃいけないんだ。

特に、<条件反射>の質を高めるためのアップデートが、ですね。

 

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●Y氏くらいコンテンツの

 

改良充実に努めれば、それはそれで相当に役立つこと、彼がE社日本法人

社長の責務を果たしていた事実が証明しています。  が、限界もある。

 

たとえば、日本法人を設立するところまでなら、手続きを間違えなければ

何とか行けます。  が、運営を開始すると様々な不測事態が生じて来る。

 

そうなると、必要なのは問題解決力、即ち<プロセス>思考。 ところが

長らく<コンテンツ>だけ攻めてきた頭脳ですから、急には転換できない。

 

しかしあいにく、総本山は<プロセス>人間の集団。 しかも短期的成果

を求めてやまない。 こちらのモタモタを、あちらにどう納得させるか?

 

やはり、<プロセス>で説明するほか無いでしょうな。 しかし、、 で、

<英語社員>としては際立っていたY氏も、<コンテンツ>型人間の限界

に到達したのでしょう、その後間もなく姿を消しました。

 

 

未だ Rational Process が4領域整然と確立されてはいなかったし、私も

EM法講師ではなかった頃のお話。  タイム・スリップして「私が教えて

上げましょう」と言っても、まあ、彼が受け付けたとは思えませんが、ね。

 

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英語を、という人に出会うと、「ついでに Rational Process も!」 と

世話を焼きたくなる裏には、そんな思い出があるからです。

                         ■竹島元一■

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